アカデミックスタイル

これまで大学院をでて、小学校教員を6年、エンジニアを8ヶ月、高校講師を2年そして並行して会社経営をしてきたが、いろいろと思うところはあれどなかなか頭の中に浮かんだ様々なアイディアや理論、いろんなことをアウトプットできないまま気がつけば30代半ばになってしまった。

最近はとにかくしっかりアウトプットしていきたい欲が高まっているが一体どういうカタチでアウトプットしていくべきかというところでこれまた様々なアイディアが頭をもたげていた。

例えばYouTuberなんかをしようかと考えたりもしたし、今でも動画配信でうまくできないものかと思案したりもしているが、動画コンテンツを始めとするSNSによる発信はうまくいけば発信力こそあれど、あくまで俗物的というか民間療法的な流行り廃りに過ぎないとも思う。

特に僕が発信していきたいことは教育全般や情報教育、情報技術的なことなどであるが、“論理的”で、かつ“有益な”情報として発信していきたい。決して「ちょっと役立つ裏技」を発信したいわけではないのだ。

最近はYouTubeや類似の動画サービス、ショート動画などで教育関係の発信者、さらには現役教育者(嘘かホントか)などによる情報発信も増えてきたように思う。それ自体は時代の流れであるし、様々な視点から様々な受け手に対して情報を発信するという活動自体は良いことだと思う。

しかし、批判をするわけではないが、それは非常に流動的で、感情的で、そして印象論的な手法である。

目先の術としてちょっと役立つライフハックというか、ジョブハック的なTipsを視聴者が自身の引き出しを増やすアイディア集としては良いと思うが、あまりロジカルでない。むしろこうしたありふれた情報に散らばるTipsを体系的にまとめ、確固たるものとして整理しておく必要があるのではないだろうかと思ったりもする。

しかも大抵のTipsは実はみんなが知らないだけで、アイディア自体が新しいものでもないなんてことはザラにある。結局本を読んだり研鑽しない(忙しすぎてできない現代社会というのももちろんある)で、SNSでしか情報収集をしないとなるとそれでも昭和から当たり前に行われてたことを目新しく発信するだけでもバズったりするわけだ。

いや、多くの現場で働く教育者などにとっては「今すぐ“使える”知識こそ必要なんだ!」というかもしれないが、それはそれ、これはこれ、だ。「今」を分析し、数多ある手法を定量的に理解することも誰かがしなくてはならないし、誰でもできることでもないはずだ。

そして、今、動画コンテンツで一世を風靡しているインフルエンサー達は言わばアイドルであるが、10年後、20年後にどういった立場を築いていくかを考えると、今アイドルになることを望んでも始まらない(なれるかどうかはさておき)。また、今アイドルでいられる人もやはりこの先どうするかは各々で考えていることだろう。

しかし、多くの人がきっと自身の生活を立てることだけを考え、インフルエンサーとして活躍した後はそこで掴んだものをきっかけにビジネスを展開していくといったことを考えているのではないだろうか。書籍の出版、グッズ販売、関連ショップなどの起ち上げ、サロン展開などである。もちろんそれもいい。書籍やサロン、講演などを通して人々に訴えかけていくのもとても有益であろう。だが、やっぱり、我流のオレオレ理論で一人称での発信では社会的にみれば少々稚拙ではないだろうか(炎上しそうな表現だけど語弊を恐れずに言う)。

社会に真に貢献していこうと考えた時、そして自身が少なからず“使える頭がある”と自負するのであれば、アカデミックに物事を捉え、カタチを残していくのがそれなりに学力を携えたものの責務ではないかと思う。

そんなことを考え、最近は“研究”をしていくことへのモチベーションが少し上がってきたというお話。

元々自分なんて研究者には一番向いていない性格だと思っていたけど、ただ手放しにインフルエンサー的になりたいわけではないんだよなというのを強く感じている今日この頃。インフルエンサーというのは言わば一流のサーファーであろう。迫り来るビッグウェーブに上手く乗り、華麗なパフォーマンスで聴衆を魅了する。多くの人はそれで楽しければいいし、サーファーもそれでお金になれば言うことはないだろう。だけど、社会全体で考えた時、人はいつまでも「なぜボードで波に乗れるのか」が魔法論的なままではいけないと思う。理屈を考える人は必要だし、理論体系に整理しておくことは未知なる波に挑戦するときにとても役に立つ。いや、新たなサーファーを生み出すときにだって、感覚で教えることも大切だけど、理論があるから効率よく教えられることもあるだろう。

あらゆる分野における学術的な研究の意味っていうのはつまるところそういうことなんじゃないかな?

そして、危惧することはこの学術的な研究、すなわち論文について、世界的にみて日本の論文の価値が下がっているというのが大きな問題となっている。自分がどこまで貢献できるかなんてわからないけど、自分が関わった分野において少しでも学術的な価値を生み出せるようになれたらいいなと思って、ちょっと動きを始めることにする。

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